例えば、工場の復旧に要する経費が1億円であると認定されれば、7500万円が交付決定される。事業が計画どおり実施されれば7500万円が支給されるが、これは補助金であるから返済の必要はない。

この補助金の3分の2は国が、3分の1は県が負担している。ほとんどの事務手続きは国の指示に基づいて県が行うが、宮城県では2020(令和2)年3月末で4406の企業(個人事業者も含む)に対し約2761億円の交付決定がなされている。

ところが、2019年6月21日に放映されたNHKの「東北ココからSP」では、気仙沼市、石巻市の水産物加工会社が「5年の据え置き期間が経過し、補助金の4分の1の自己負担分の返済に苦慮している」と伝えられた。番組では何度も「補助金の返済」という言葉が連発されたが、グループ補助金は返済の必要はない。

先の例でいえば、自己負担分の2500万円については無利息の「被災中小企業・施設整備支援事業」(通称「高度化スキーム」)という中小企業基盤整備機構の融資制度を利用して調達することが可能である。NHKが「補助金の返済」と言ったのは、この「高度化スキーム」のことだと思われる。

ただし、「高度化スキーム」の利用企業は、グループ補助金受給企業の3割弱にすぎない。補助金の仕組みに誤解を与えるような報道であったことは否めない。

※本記事は、2020年10月刊行の書籍『補助金の倫理と論理』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。