ブルーストッキング・ガールズ

7

木島は逃げてきた街の灯を見た。懸命に走ってきたので、どこをどう逃げてきたのか分からなかった。

すでに晩秋の夜である。汗だくになった体に冷たい風が当たり、寒気さえした。

昼前、目の前に現れた本田は、小男だった。暗い着物で、尻をはしょっている。

股引きも黒く、暗闇から湧き出てきたような男だ。本田は上目遣いに木島を見ると、フンと鼻を鳴らした。

「逃げられねえよ」と静かに言った。今さら何を開き直るんだ、というように。

「おれは、お前らから逃げるようなことはしちゃいない」と木島は言った。
「困った男だねえ。お前さん、自分が何を言ってるのか、分からねえんだ」
「当然のことを言ってるまでだ」
「当然ねー」
「お前のような、木っ端役人には理解するのは無理かも知れないけどね。お前なんぞ、怖くはない」

木島は自分の声が上ずっているのが分かった。大勢の警官が囲んでいるのが分かる。

鋭い視線を木島は感じた。その中を、かき分けるように木島は逃げた。

すばしっこく、逃げ足の速いのが、自分の特技だと思う。塀を越えた。屋根に上って、どぶに飛び込んだ。

川の土手も転がり落ちた。田んぼの井戸のポンプを激しく漕ぎ、水をむさぼるように飲んだ。

遠くに小さな提灯の明かりがゆらゆらと見えた。稲棚に身を隠した。

ただ体が震えた。汗ばんでいた体が急激に冷えた。