「そうですね。それは強く感じました」
「だから主人は恨まれて迫害されたんです」
「迫害された……? どうしてですか」

「主人が正論を主張したからです。正しいことをいう人間が迫害を受けるのは、古今東西、どの国でも、どの時代でも変わらない真実です。革命を起こそうとする人間が、権力者から迫害されるのは当然のことでしょう?」

「えっ、高槻教授は革命を起こそうとしていたんですか」
沙也香は驚いて聞いた。

「そうです。革命というと大げさに聞こえるかもしれませんが、そういってもいいとわたしは思っています」そういって、夫人は少し間をおいた。「じつはわたし、主人と結婚する前は世界の革命史を研究していました」

「ああ、前は研究生活をしていたとおっしゃられてましたね。革命について研究されていたんですか」

「そうです。でも革命と一口でいっても、武力革命だけではありません。文化革命、産業革命、思想革命も革命のうちです。世の中が大きく変わるときは、必ずなんらかの革命が起こっています。その中には、ほとんど注目されないような小さな改革も含まれます」

「いわれることは、なんとなくわかります」

※本記事は、2018年9月刊行の書籍『日出る国の天子』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。