「メールが入ってたんよ」と茜は言った。中学のとき、関西から越してきた茜は興奮すると今でも方言でしゃべった。香奈はそんな時、少し茜を身近に感じる。

「あなたたちふたりなかいいわね」茜はまるで読むように言った。「きっとおふたりにとっておたがいはオトコのかわりなのね」

「ムカツク、こんなの許せんわぁ。わたし、これを書いた犯人は、どうしても捕まえてやる」
「放っておきなよ」香奈は真面目にそういった。
「ムキになると、面白がるのよ。腹を立てるだけソンソン」

クラスには二、三人、デビューしているのではないかと噂される子がいる。元来女子高というものは生活指導が厳しいのだが、教師の目を盗んで濃い化粧をし、盛り場へ出かけていく。でも、彼女たちは少数派だ。

その他に何人か、休みの日になると、学校の制服を着て渋谷や池袋のあたりで遊んでいる子がいた。芸能人が大好きで、バンドの追っかけをしているという噂もある。塾に通いながら帰りに遊んでいる子も数名いた。

他の子達は何をしているのかは分からない。学校の授業は素直に聞いて、あとは親しい友達数名と絶えず世間話をしている子がいる。彼女たちの中には、自己顕示欲の強い子も何人かいる。

このような子が何人かグループの中心に来ると、グループ内の関係は一寸ぎすぎすする。お互い目立ちたいのだが、けん制しあうのだ。

※本記事は、2020年10月刊行の書籍『百年後の武蔵野』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。