実際に、発達障害者へのアプローチを、障害者雇用を前提としないで行うことは、精神科的な、半ば専門的な配慮を要求されるハイレベルな話です。精神障害者への対応はだれでもできるように思われているかもしれませんが、そう簡単なことではありません。

専門的知識だけではなく、その人の資質も大きく関係しますし、習得にも時間がかかります。また対応する人のストレスマネージメントも欠かせません。職場は仕事をする場所ですから、人的にも時間的にも余裕がないのが現状です。

全般的に、仕事でのストレスのリスクが指摘されており、ストレスチェックなども導入されています。当然ながら、精神的不調のある職員は、発達障害の傾向がある人ばかりではありません。

ストレスチェックは、委託している精神科医がその評価をし、必要な人に精神科の受診を勧めます。メンタルヘルスへの配慮は、精神科的フォローへとシフトしていきます。発達障害の傾向においても同様で、精神科への受診勧奨になり、その域を出ません。

そして発達障害だとわかったあとで、継続就労できにくい理由は、発達障害ではないかと気づくきっかけが、業務上の不都合だからです。端的に言うと、仕事ができないことと周りの人とうまくやれないことです。これはセットのことが多いですが、これらは職場の人間関係を通し発生します。人間関係としても、悪化していることが多いからです。

発達障害者の就労支援の利用は高くなっていますが、それはいわば、就労のリセットです。大人になってからわかる障害という問題が、このように中途障害的な状況を生んでおり、退職してのち障害者としての再就職という道筋を作っていっています。

※本記事は、2020年9月刊行の書籍『“発達障害かもしれない人”とともに働くこと』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。