血は少し抜いてくるようだが、毛はそのまま。それを黒いポリ袋に入れて渡してくれる。ヤギの肉は、汚い台の上にブロックが並んでいるし、ヤギの足などは上から吊るされている。

もちろん冷蔵庫などない。しかも、よく見ると台の下は檻になっていて生きているヤギが数頭動いている。

見たことはないが、多分裏手にヤギの解体場所があるのだろう。魚売り場では、地面に置いた板の上に魚が並んでおり、売り子の横に、汚れた水が入ったバケツがある。

見ていると、買う人の希望により、頭や内臓を取ってくれるが、取る包丁が面白い。売り子が腰を下ろしている台に、山刀のような刃物が足の間に、刃を上向きにセットされている。

その刃に、上から魚を押し付けて切っているが、洗うのは横にあるバケツの水。そのつど水を替えるわけではないので水はもちろん汚れ切っている。汚れた水をボタボタ垂らしながら、魚をポリ袋に入れて渡してくれる。

インド人は海の魚は磯臭いとして原則食べないので、売っている魚は川魚。茶色い川で過ごしている魚なので泥臭く、殺菌を兼ねてフライにして食べてみたが、やはり臭い。もし食べるのならカレーしかない。

どこの売り場でも台の脇には、猫や犬が歩いているし、ハエも飛んでいる。売り子は手を洗っているようには見えないし、市場の裏手にあるトイレは、とても利用する気にはならない汚れと臭い。さすがに手洗い場はあったが、石鹸の類はない。

買った後、自宅で再処理は不可欠。観光案内は何度もしたが、市場で、自分で買ったのは、野菜、果物、鶏くらい。エビは日本に輸出する冷凍エビを生産者から直接購入していたし、チェンナイ出張の機会には輸出用の冷凍マグロを分けてもらっていた。

インドで肉・魚を買って食べるのは勇気(慣れ?)が必要。

※本記事は、2020年10月刊行の書籍『多様性に溢れる悠久の国 何でもありのインド』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。