「真実を知るために、私は何が可能か、何をすべきかと、毎日考えていました。真実を明らかにするだけならいろいろ方法もあるでしょう。でもそうはいきませんわ。

なぜって、このことは……いつもゴシップを求めているロンドンの社交界のような所では、スキャンダルの格好なネタにされる恐れがありましたから」

「………」

「もしも背後に恐ろしい真実が隠されていて、それが白日のもとに晒されるようなことにでもなれば、ロイド財団グループに致命的なダメージを与える恐れがありますから」

「もちろん、良くわかります」

宗像も真剣な面持ちで聞いていた。

※本記事は、2020年8月刊行の書籍『緋色を背景にする女の肖像』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。