そして、もう一度挨拶すると帰って行った。二人は、しばらく無言で歩いていたが、禅が呟いた。

「ビビったよな……」
「ああ、最初はどうなるかと思ったよ」
「俺なんか、昔殴られた時の事を思い出したよ」
「俺、まだ震えているよ」

二人は苦笑した。禅は真面目な顔をすると言った。

「将太くん、何か変わったよな」
「そうだな、悪ガキってイメージが消えたような?」
「きっと少しずつ大人になっているんだよ」
「そうだな……」

賢一は、そう呟くと思い出したように言った。

「でも、剛史……あいつは変わらないよな」
「ああ、見たか? あの不満そうな顔」
「将太君がいると、何も言えないからな」
「相変わらず嫌な奴だよ」

剛史の話をすると、二人は嫌な気持ちになった。将太は喧嘩が強い。

負けず嫌いで、粋がったヤツや喧嘩の強い奴と喧嘩をする。しかし、理由なく弱い者をいじめたりしない。いわゆる硬派だった。

しかし剛史はネチネチして嫌な奴だった。将太の知らない所で弱い者をいじめてカツアゲをし、仲間を連れて万引きをしていた。

もちろん、それを将太は知らない。知られたら将太は剛史を許さないだろう。