二人は互いに顔を見合わせて、大笑いをした。

「ほんと、夢のようだ。こんな夢のような生活があるんだ。私は本当に幸せだ。ねえ美津ちゃん、私、いつまでもここにいていいよね」
「もちろんよ、トメちゃん。いつまでもここにいて、私のそばにいて。私寂しいんだ。この部屋にひとりぼっち。みんながときどき集まってくれるけど、夜が寂しい。咳が止まらなくって、本当に苦しくなったとき、トメちゃんがそばにいてくれるだけで……」

美津が突然に咳き込んだ。トメは机の上の、土瓶に入った咳止めの煎薬を与えた。

咳き込みは激しかった。一時間に一度は咳き込みが来る。そのたびにトメは、美津の背中を一生懸命さすった。

「大丈夫よ。大丈夫」
「私は、もう治らない。分かってるんだ。みんなのように外を走り回ったり、テニスをしたい。馬に乗って野山を駆け回りたい。読まなきゃいけない本はたくさんあるのに、東京に出て勉強をしたいのに、これからの女性として政治の勉強も、文学の勉強も、たくさんの勉強をしたいのに……もうできない。すてきな恋人を見つけて、胸の裂けるような恋をして、結婚をして、可愛い赤ちゃんを育てて、幸せな生活をする。そんなことはもうできない。そんなことを毎日毎日、繰り言しているんだ」

※本記事は、2018年3月刊行の書籍『ブルーストッキング・ガールズ』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。