Episode2 逆風

長年にわたり父に仕えてきた番頭が突然退職。

父の死後すぐに、五十歳近い番頭と一緒に得意先を回り引き継ぎをしていたら、半年もしないうちに「辞める」と言い出した。理由はわかっていた。

この番頭は前年の年末に集金した三百万円を落として大騒ぎになった。その事件以来、退職金と相殺する話になっていたらしい。父にはかなりの引け目を感じていたと思う。

父が亡くなって荷が軽くなったのか最初は張り切っていたが、私が猛烈に仕事をするのでついていくのが大変だと思い、辞める機会を狙っていたと考えられる。父の右腕として長年商売を仕切ってきた番頭の退職で、私は社長就任のわずか半年後に孤軍奮闘することになる。

[写真] 1972年、若き日の上野俊夫(29歳)。味噌醤油問屋の古い体質を変革するべく悪戦苦闘した。

降りかかってくるトラブルを火事場の馬鹿力で必死に解決。

大学を出たばかりの若造はやる気だけは誰にも負けなかったが、経験不足ゆえにトラブルの連続であった。私の容姿は高校生みたいに弱く幼く見えたのだろう。

表面上は従っていた社員とも時が経つにつれて衝突が度々起こるようになった。特に中途採用の営業社員の中には、遊ぶ金欲しさに集金した金を懐に入れる者も何人かいた。