第一部 八荘源

第二章 青春の宴

村上香奈は、私立の女子高校に通う二年生だった。

当時のことを香奈はもうあまり覚えていない。正直に言うと高校時代はあまり楽しくはなかったのだ。いつでも休み時間になると、一人で本を読んでいた。だが、その頃何気なく投げつけられた言葉を今でも思い出すことがある。

「香奈ってきれいだけど、もてないかもよ」
ある日、雑談の最中に香奈はそういわれて途惑ったのだった。
「え、何で?」

きれいと言われるとまんざらでもないのだが、もてないかもといわれると、相手の意図が気になる。だが、発言した子は思ったことは何でも口にしてしまうが、あまり毒を含ませようという意図はないタイプの子だった。

「そうねえ、まあ、簡単に言うとね、母性のようなものがないのよ」
「母性?」
「うん、母のようにオトコを抱きとめるって言うかあ」
「それがないとダメなの?」
「母性、じゃなくてもいいんだけど、かわいこチャンの真似も出来ないしぃ。かといって、男に挑みかかるようなとこもないし」