プロローグ

「残念ながら大学には出ないよ、マグダ。どうやら軽い風邪をひいてしまったようだ。週末までの間、休みを取ったほうがいいだろう。私の全ての予定を来週の火曜日以降にずらしてください。そして木曜日と金曜日の数学と力学の講義は、マグダが私の代わりにやってください。いいですか?」

短い沈黙。そして、「了解しました」という答えが聞こえてきた。

「まだ他に何か?」
「いいや、マグダ。それだけだよ。おやすみなさい」
「おやすみなさい、プランク先生」

彼は少しの間、左手に掛かった受話器と、右手にある電話機本体を見つめていた。それから、彼は小さい受話器を固定金具のところに掛け、装置を保管庫の上に置いた。

マグダ・フォン・ブーロフは、完璧な助手であった。依頼されたことを間違いなくやり遂げるだろうと、プランクは決して疑うことはなかった。

しかしまさにこの彼女の完璧さが、プランクにある考えを想起させた。それは、秘密警察の巧妙な操作によってこのような成り行きになったのではないか?というものである。