脳血管障害が原因で起こる「血管性認知症」​

脳血管障害(脳梗塞、脳出血、脳動脈硬化症)が原因で起こる認知症は、他のタイプとの混合型を含めると、全体の20~30%を占めるといわれています。若年性認知症(65歳未満)では約4割を占めるとされています。

脳組織の壊死(梗塞、出血、微小出血:マイクロブリード)や瘢痕化(線維化:グリオーシス)を来して神経細胞死や細胞間ネットワーク損傷を来すタイプです。50歳位から発症が多くなり、男性に多くみられます。高血圧や脳梗塞などの動脈硬化性疾患の既往症がある患者さんが多く、脳卒中後に発症するケースでは発作の3カ月以内に認知機能の低下が始まります。

一般的に、脳血管障害の発作が起こるたびに症状が増えていき、寝たきり状態にいたる全経過は約7年と、アルツハイマー型認知症より予後は不良です。アルツハイマー型認知症は2年から20年程度かけて徐々に進行しますが、血管性認知症の場合は麻痺などを伴って階段状に進行することが特徴的です。

症状は障害を受けた脳の部位によって違います。認知機能の障害は比較的軽く、いわゆる「まだら認知症(まだらボケ)」となるため、記憶障害は進んでいても計算や理解力は正常である一方で、複雑な作業ができないなど、症状には不均一な状態がみられます。

発症は比較的急性で、脳発作のたびに階段状に進行します。片麻痺、言語障害(失語、構音障害)、嚥下障害(むせ、誤飲、誤嚥、肺炎)、歩行障害、尿失禁、病的反射など、局所の神経症状を伴います。

精神症状としては、怒りっぽさ、意欲低下、抑うつ症状、感情の障害がみられ、症状が進むと、せん妄や被害妄想などが現れます。脳血管障害の中でも、小さな脳梗塞を何度も起こす脳・小血管病性「多発性脳梗塞」の場合、目に見える障害がなく自覚症状もないため、発症しても気づかないことが多いのです。ところが、発症から10年以上が経過すると、高い確率で血管性認知症になるといわれています。

[図3]認知症を呈した脳梗塞のCT像(3例)
黒く見える領域が梗塞巣
[図4]脳・小血管病変性認知症のMRIフレア画像
白質変性所見と多発性ラクナ性脳梗塞が認められる

予防法は?「日々の生活習慣」が大きく関係していた…

予防は生活習慣の改善などで可能です。脳梗塞や脳出血などによって起こる認知症の危険因子は、高血圧症、脂質異常症(高脂血症)、運動不足、肥満、食塩の過剰摂取、飲酒、喫煙、糖尿病、心疾患(不整脈など)などです。つまり、生活習慣が病気の発症に大きく関係しています。

心疾患のうち塞栓性脳梗塞を来す最も多くて危険性が最も高いのは心房細動という不整脈です。その他、奇異性脳塞栓症といって右→左シャント疾患(卵円孔開存、心房・心室中隔欠損、肺動静脈瘻など)で塞栓症脳梗塞を起こし得ます。

心房細動は突然重症の卒中(半身麻痺、失語、意識障害など)を発症する危険性だけでなく、本人も周囲の人も気づかないような小さな梗塞が度重なって血管性認知症になっていきますので、早期の発見と治療(カテーテルアブレーションなど)が必要です。治療は、薬と身体活動を高めるリハビリが主体です。

介護で注意点は、脳血管障害の再発予防に努める、自発性低下や廃用症候群になりやすいのでデイケアやデイサービスなどを利用して活動性を高める、嚥下障害や歩行障害を伴うことが多いので誤飲・誤嚥・肺炎や転倒を防止するなどです。

梶川 博 医学博士

森 惟明 医学博士

※本記事は、2018年5月刊行の書籍『改訂版 認知症に負けないために知っておきたい、予防と治療法』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。