第2章 補助金の論理

2 補助金の必要性、正当性

補助金Bの正当性

ローカルな話題で恐縮だが、私が仙台市に居住しているので仙台の話をする。

2018(平成30)年10月23日の河北新報に「乗合交通試験運行」という記事が掲載された。仙台市宮城野区の燕沢地区は丘陵地のため道が狭く坂が多い。

そのためバス路線から外れ、公共交通の空白地となっている。今後は自動車運転免許を返納する高齢者住民も予想されることから、地域住民の足を確保するため、地元6町内会が交通検討会をつくり、その会が宮城野区のタクシー会社に運行を委託することになり、その試験運行が始まった、という記事なのだが、このタクシー会社には仙台市から補助金が出るという。

このような話は、仙台に限らず全国各地であるはずだ。その場合、それぞれの市町村がタクシー会社に補助金を出すことになるだろう。補助金Bだ。

普通はタクシー会社に公共性があるとは認識されていないが、このようなケースで純粋な私企業であるタクシー会社に補助金が出ても誰も文句を言わないだろう。地域の高齢者の生活支援という公共の利益に貢献しているからだ。

「高齢者」といえば、2019年の前半に高齢者ドライバーの交通事故が多発し大きな社会問題になった。原因のほとんどはアクセルとブレーキの踏みまちがえによるものだ。

2019年6月11日、NHKは19時のニュースで、急発進を防ぐ安全装置を乗用車に取り付けるのに東京都が90%の補助を出すことを決定した、と報じた。この補助金についても文句が出てくる可能性は低い。

しかし、アクセルとブレーキを踏みまちがえる可能性が大きくなっているのならば、そもそも運転免許を返上すべきである、それをしないのなら、自分の負担で安全装置を取り付けるべきである、という人もいるかもしれない。