かつてフランスで7000羽ほど確認されていたヒメノガン(姫野雁という和名はあるが日本では生息していない)が、現在では350羽ほどに激減したという。フランスでは、国際競争に対応するため小麦栽培の大規模化が推進され、牧草地が小麦畑にかわっていった。そのためにヒメノガンの住処である牧草地が減少していったことと、ヒメノガンの餌である昆虫が農薬の大量使用により減少したことがヒメノガンの激減の理由であるという。

フランス政府は、このことは環境破壊になると考え、小麦畑を牧草地に転換する農家には補助金を出すことにしたという。これは外部不経済の事例であるともいえるかもしれないが、いずれにしても、このような補助金の支出に異を唱える人は少ないであろう。

補助金Bの正当性を考えるときにもう一つ指標となりうるのは、それが社会全体の利益になるかどうかということだ。つまり公益性があるかどうかということだ。

「公共性」と「公益性」はほぼ同義なのだが、ここでは公共の利益という「利益」を中心に考えて、あえて「公共性」と区別する。補助金Bというとき、私がまっ先に思い浮かべるのは雇用助成金である。

助成金と補助金は別物という人もいる。確かに助成金というと報奨的な意味合いをかなり含んでいるところがあるが、ここでは助成金も補助金と考える。

雇用助成金の代表的なものは、身体障害者を雇用する企業に与えられる雇用助成金であろう。公共性がまったく感じられない、ごく普通の工場や建設会社に、不良債権処理時の銀行に投入されたような補助金、収支差補給金のようなものが出たとしたら(出るはずはないが)、必ず皆が異を唱えるだろう。

しかし、そのごく普通の会社に支給されたものが障害者雇用助成金であれば誰も文句をいわないだろう。障害者を雇用することは社会の利益になるからだ。

※本記事は、2020年10月刊行の書籍『補助金の倫理と論理』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。