第2章 補助金の論理

2 補助金の必要性、正当性

補助金Bの正当性

1927(昭和2)年3月14日、当時の大蔵大臣片岡直温が衆議院予算委員会で「今日正午ごろ、渡辺銀行がとうとう破綻いたしました」と失言(その時点で東京渡辺銀行は破綻していなかった)して取りつけ騒ぎとなり、昭和金融恐慌のきっかけとなった。一銀行の破綻が(実際は破綻していなかったが)、日本全国に大混乱を巻き起こしたことを私たちは知っている。

一企業の倒産が一企業の倒産にとどまらず大きな社会的問題となる。これはその企業の事業が公共性を有しているといっていいだろう。誰もがその公共性を認めれば、補助金の支出に正当性が与えられることになる。

かつて、海外でも評価された経済学者・宇沢弘文は、「社会的共通資本」という概念を提示した。宇沢の主張は、森林、大気、水道、教育、公園、病院などの社会資本は利益追求の対象として市場に委ねられてはならないというものだ。

この考え方は、制度派経済学の創始者として知られるソースティン・ヴェブレンがすでに提唱していたものであり宇沢のオリジナルではないが、ヴェブレンは私企業の企業活動に否定的であったのに対し、宇沢は企業の自由競争を前提としたうえで、「社会的共通資本」に限っては競争を制限すべきとしたのだ。

宇沢は銀行も社会的共通資本に含め、銀行が投機目的に走ることがあってはならないと戒めている。私は銀行が社会的共通資本であるということに違和感があるのだが、それはさておき、宇沢の提唱した社会的共通資本という概念は補助金Bの正当性を論ずるときに一つの重要なメルクマールになるだろう。

一つ例を挙げよう。2019(令和元)年5月14日のNHKの朝のニュースでフランスの環境問題が報じられていた。