その後、バブルが崩壊し、「失われた20年」といわれる時代に突入すると、年功序列や終身雇用のシステムが維持できなくなり、倒産やリストラで職を失う人が増えました。能力主義や成果主義が導入され、機械化やIT化が進み、貧富の格差はますます拡大する一方です。

そうすると、こころの病にも多様化の傾向がみられるようになってきます。プレッシャーに押しつぶされてうつや適応障害になってしまう人、麻薬や危険ドラッグに手を出してしまう人(薬物依存症)、パチンコやスロットに入り浸りになってしまう人(ギャンブル依存症)、痴漢やのぞきを繰り返して何度も逮捕される人(性依存症)、衝動的に万引きを繰り返してしまう人(クレプトマニア)、ほかにも、過食症、摂食障害、ひきこもり(対人恐怖症・家族依存)、DV(家庭内暴力)、ネット・ゲーム依存……etc.

このように、こころの病というのはその時代その時代の“社会のありよう”を反映しています。食糧難の時代に過食症になる人はいませんし、失業率が高い時代に過労死する人はいません。

100年前のアメリカでは禁酒法の時代にアルコール依存症になる人が増えました(人は飲むなといわれると飲みたいと思う欲求がますます強くなります。禁酒法の時代にはマフィアの作る密造酒が横行しました)。法律によって、人間の本能的欲望を抑えることはできません。「高貴なる社会実験」としての禁酒法は、失敗におわりました。

いま、うつやさまざまな依存症に悩む人が増えているのも、大もとを探っていくと社会のありように原因があるはずです。私は現代社会の人間関係の希薄さや、精神的に大人になりきれないまま社会に出てしまう人が多いこと、貧富の格差が拡大していること、全体的に豊かになり嗜好が多様化したことなどが原因ではないかとみています。

※本記事は、2017年10月刊行の書籍『ヒューマンファーストのこころの治療』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。