長野県との県境に位置する当院は利用者の半分は長野県の方々です。入院に限っていえば長野県の方々の方が多い。救急車による搬送件数も岐阜県とほぼ同数あるのです。もし当院がなくなったら長野県の当該地区の方々は病院まで救急車利用でも40分以上かかってしまいます。

そう考えると診療所化は生死にも関わる問題であり、中津川市だけでなく病院を利用される長野県の方々も含めて考えるべき問題なのです。

当院は「国民健康保険坂下病院」の名前がついています。悲しいことに何故「国民健康保険」の名前がついているのかとの私の質問に答えられた行政の方は一人もいませんでした。

今回の問題を考える前にもう一度国民健康保険の診療施設が何故設置されたのか、役割は終えたのかを振り返ってみる必要があります。化石医師が赴任した当時地域には6人の開業医師がいました。しかし現在はわずか2人となっています。

地域は過疎高齢化が進行しています。多くの方が車の運転ができない交通弱者なのです。当地から市民病院までタクシーで片道6000円以上かかります。年金生活で払えないからと処方日数を14日に希望される方が多いのです。

いくつもの診療科を受診される高齢者はバス利用もままなりません。「通院バス」を出しますでは片づけられない問題です。

当地域および隣町(長野県)でも診療所化反対の署名運動が始まりました。その数は現時点で坂下周辺地域22000人、人口5800人弱の隣町で3000人で計25000人です。当院の医療圏人口は約30000人くらいです。

※本記事は、2020年6月刊行の書籍『新・健康夜咄』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。