そんな頃、左胸がチクッ、チクッ、と痛む事が気になりだした。心臓?と思ったりしたが、いや、そんなに深くない……乳癌?その時、恵子の言葉がひっかかり、澄世は、K病院の乳腺外科のS先生を受診した。

「しこりですか?」
「いえ、しこりはわかりません。ただ左胸がチクチク痛いんです」
「癌は痛くないですよ。痛くてわかったら誰も苦労しないです」
「そうですね……」
「まっ、調べましょう」

そんなやりとりの後、触診とマンモグラフィーとエコーの検査を受けた。S先生は、それらの結果を診た上で、左右両胸に三ヶ所しこりが有ると言い、注射器を胸に刺し、何やら吸い取った。

一週間後、結果を聞きに行くと、細胞診の結果は、良性だが、五段階の三なので、より詳しく調べると言い、今度は麻酔をし、組織診の為、三ミリほどの太い針で、何やら取り出した。血がかなり出たので、澄世は目をつむったままで、看護師に拭き取ってもらった。しこりは、それぞれ一センチくらいだと言われた。

また、一週間後に結果を聞きに行った。S先生は待ちかまえていたように、穏やかに言った。

「癌です。しかし、DCIS、つまり非浸潤性乳管癌の0期です。良かったですね」