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何故今頃、ここにエリザベスがいるのか? 今日は結婚披露パーティーに出席する予定ではないか。何かと準備もあるだろう。いま時こんな場所をうろつく暇などないはずだ。そう思ったとたん、エリザベスは突然左に曲がった。

またもや宗像の目指す方向と同じである。通りは緩い傾斜の細い道で、はるか先まで一直線に続いている。ここが例の画廊通りなのだろうか? 急いで地図を照合すると、果たしてそれは、コンシェルジェに赤丸印をつけてもらった、まさにその道だった。

驚く暇もなく宗像も後を追うように続いて左に曲がった。エリザベスは、左、右、左と、交互に顔を向け、道の両側で何か探しものでもするように歩いている。左の画廊のショー・ウィンドウを覗き込んだと思えば、今度は右のショー・ウィンドウという具合にである。

なぜこのような朝早くに画廊廻りなどする必要があるのか? 宗像は目立たぬようにエリザベスの後をつけることにした。

早朝のこと、通りを歩く人は疎らである。彼女は後ろを振り返らずに夢中で歩いている。気づかれる心配はなさそうだった。

十軒目くらいだろうか、エリザベスはとあるギャラリーの前で立ち止まり、ショー・ウィンドウの中を食い入るように覗き込んでいる様子だ。宗像は少し手前の画廊の傍に佇み、内部を見るふりをしながらその数軒先の画廊を凝視した。