「客足が減った」というのは現象であり、まだ原因に到達してはいないのです。実はこのエピソードは私が実際に体験したものです。

客足が減った理由は「商品の魅力が減った」ことが原因だということがわかりました。そこである社員が「そうだ、商品に魅力が感じられないからだ。ではイベントを企画し、お客にインセンティブを与えよう」という意見を発しました。

しかし、「商品の魅力がなくなった」というのも現象であり、原因ではないのです。「商品に魅力が感じられない」のは「品数が減った」からです。

これを捉え、「同じもので量感を出したらどうか」とその場しのぎのアイデアも出てきました。しかし、これでも本当の原因にはたどり着いていないのです。野菜が売れなくなったのは、春は生産の端境期にあたり市場に出回る品数が減り、消費者にとって魅力ある商品が少なくなったことが原因でした。

つまり、このケースでは、売上が落ちたのは、「端境期であった」ことが原因で、そのことに対し正しい対策を講じなければ事態は改善しません。このように売上が落ちた真因を探る、これがロジカルシンキングです。

しかし端境期の先まで原因を追究することはできません。なぜ端境期が生じるのかを考えれば、「生産の循環がそうなっている」という事実に行きつきますが、会議を行っているのは販売会社ですので、生産の方法について対策を講じることはできないからです。

このようにさらなる原因が出てこない場合、その最後に出てきた原因が真因と認識されるのです。

[図] ロジカルシンキングの手法

このように、真因を探り出し対策を考える。この態度が身についている企業とそうでない企業の間には明らかに差が生じることになります。時間とコストが限られている企業経営は、なおさらそれらを無駄にしないように、社員ひとりひとりがロジカルシンキングの手法を学ぶべきなのです。

※本記事は、2020年1月刊行の書籍『確実に利益を上げる会社は人を資産とみなす』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。