「すまない」
「今すぐ援助を打ち切るわけじゃない」

ユヒトは顔を上げ、浅間山の煙を見た。

「今は冬の中休み。またしばらくしたら荒れる日がやってくるだろう。それまでの間に、できる限りのことをしてほしい。手伝えることはなんでもするから」

ユヒトらは埋葬が終わると帰っていった。その晩、男子大学生の竪穴式住居に、誰が呼び掛けるともなく幹部たちが集まった。埋葬が済んだことを機に、みな抑え込んでいたものが一気に爆発した。

「こうなることは分かっていた!」

開口一番、岩崎がまくしたてた。

「早坂流の歴史を変えずに生きていくってやり方だと、そもそも俺たち全員この世にいない方が良いってことになる。柵の中でのうのうとするのは現代に戻る手立てを見つけてからにすべきだよ!」
「落ち着いて」

林は岩崎を座らせた。

「とにかく、このままではまずいと分かった以上、方針を改めないことには、第二第三の犠牲者が出るだけだ。ぼくは前回否決された貨幣の発行、あれをもう一度検討すべきだと思う。どうかな」

ほぼ全員が賛成した。早坂と沼田は何も言わず、目を細めて周りを伺っていた。

※本記事は、2020年7月刊行の書籍『異世界縄文タイムトラベル』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。