Chapter6 理想と現実

それから一週間が経った。よく晴れた午前中、笹見平の全員とユヒトら縄文の若者五名が、柵からそれほど離れていない丘の斜面に集まっていた。

抜けるような青空。眼下には雪化粧をした広大な原生林が広がっている。はるか向こうに浅間山が見える。

風は無く、頂から立ちのぼる噴煙は、天に向かって真っすぐ伸びている。彼らはその見晴らしのいい場所に、女子中学生を埋葬した。

埋葬は全てイマイ村の方式に則った。穴を掘り、遺体に石を抱かせて埋める。土葬である。

イマイ村の若者たちがてきぱきとやってくれて、午前中のうちに全てが終わった。林と早坂が沈痛な面持ちで墓のそばに立っていると、ユヒトがやってきて声をかけた。

「あの子は自然に帰っていく。もう心配ない」
「何から何までありがとう」

林は頭を下げた。

「笹見平のみんなもだいぶ顔色がよくなってきたね」
「イマイ村に食料を分けてもらったおかげだよ」

林はもう一度頭を下げた。早坂は黙っていた。

「実はその件で、長老からことづけがあるんだ」

ユヒトは口籠るように言った。

「この一週間――つまり、きみたちが病人みたいな恰好で助けを求めてきてから、イマイ村も結構な援助をした。正直、村の食料もギリギリなんだ。酷なようだけど、早めに自分たちでなんとかできるようになってほしい」