「桜は、その年によって、花の数や色が異なります。そのほとんどは、前年の夏の気候が影響しています。

今も桜を守り続ける桜守の佐野藤右衛門さんが言います。夏は桜にとって、成長の季節。葉桜の時期は、桜は根から吸い取った養分を枝先に運んで光合成を促し、それが落ち着つくと、今度はその養分は幹に回ります。本格的に幹が太りはじめるのはお盆過ぎ。

この頃、次の春に花を咲かせる花の芽が出来るのです。これをゼロ芽といいます。つまり、桜の花はこの時期に準備がはじまるわけです」。(出典:「日本の桜守の証言」WWFジャパン)。

夏の高温化で桜がダメージを受けているというのです。ソメイヨシノは気候変動にとても弱いといわれています。日本人の命ともいうべきソメイヨシノが、次の世代は、見られなくなるかもしれません。

影響は計りしれません。台風は年々巨大化し、百年に1度の記録的豪雨という集中豪雨を「毎年」聞くありさまです。千年単位の気候変動は間違いなく起こっています。

そんな目の前の現実に、アメリカがパリ協定から離脱するというのです。多くの人が言葉を失います。アメリカ・ファーストではなく、アース・ファーストの時代が来ているにもかかわらず。

気温が1度上昇しただけで、危機的な現象が相次ぐ今日、対策を講じなければ、今世紀末までに平均気温は3.8度上昇するといわれています。想像を絶することです。

核戦争を上回る被害をもたらすかもしれません。ほんとうに指導者の責任は重いと言わざるを得ません。

2012年にブラジル・リオデジャネイロで開催された「国連持続可能な開発会議」でウルグアイのホセ・ムヒカ大統領がスピーチをした内容に、大きな共感が生まれました。それは次のようなものでした。

「質問をさせてください:ドイツ人が一世帯で持つ車と同じ数の車をインド人が持てばこの惑星はどうなるのでしょうか。息するための酸素がどれくらい残るのでしょうか。

同じ質問を別の言い方でしましょう。西洋の富裕社会が持つ同じ傲慢な消費を世界の70億~80億人の人ができると思いますか。そんな原料がこの地球にあるのでしょうか。可能ですか。

それとも別の議論をしなければならないのでしょうか。なぜ私たちはこのような社会を作ってしまったのですか。」(出典:「世界でもっとも貧しい大統領 ホセ・ムヒカの言葉」佐藤美由紀 双葉社)

※本記事は、2020年9月刊行の書籍『ワークスタイル・ルネッサンスがはじまる』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。