6つ目の約束

Third

2014年1月4日。初めての帰省での正月、そして小牧への帰還、もう当たり前になりつつ有る名古屋郊外の風景と空気。伊吹颪が身も心も引き締めてくれる。由里香も仕事も多忙な様子で、疲れからか、年明けから風邪をひいてしまった模様のメールが届く。

ここからが本当の試練であり、挑戦ロードの佳境となる。英会話をそこそこ習得して英語検定3級を受験し、合格してさらなるステップアップを、とのプランの年である。

6月に入ってすぐ、横須賀の友人から由里香に、中堅企業のオファーが届く。

前の由里香の職場の先輩で由里香の理解者であり、その会社に由里香を託した理由もその彼の存在が大きかったからであり、その後も、その友人に由里香の状況は定期的に話していた。その1カ月前、新緑の頃横須賀への帰省時、由里香との会食時にふと漏らした言葉が、心に残っていた。

「私、友人から良く悩み事の相談を受けるの」

意外だったが黙って頷く私に言葉を続ける。

「私はただ聞いてあげるだけ。だけどね、相手の心が軽くなったって。聞いてあげるうちに自分でも役に立てる道なのかなって、思う様になったの」

今まで由里香はどちらかと言うと、会話では快活で発信者側だと、勘違いをしていた。

「すごいな、話が聞けるって、心のキャパが無いと無理だからね」

少しの沈黙が有った。

「森山さん、私、セラピストで、人のお役に、立てたら良いなって、思っているの……」

由里香の視野に「医療セラピスト」が有る。但し、ポテンシャルもキャリアも要する仕事であり、臨床医の資格取得も必須で、本人のすさまじい努力と周囲の支援も必要とされる。その様な事を考えている最中での、共通の友人からの彼女へのオファーで有った。