僕、マコト、小林、タケ。同じクラスメイトでいっつも馬鹿ばっかりやりながら、一緒の時間を過ごした。今日も帰宅部の僕ら四人は帰りにファミレスに寄って、ドリンクバーと山盛りポテトフライを頼んでどうでもいい馬鹿話をするのだろう。小林とタケを乗せたピンク自転車が右折して見えなくなった頃、マコトが従前の話題に話を戻した。

「一人親方の個人工務店も大変なんやで。仕事がだんだん減ってきたってオトン言うてたし」

「そうやろなぁ」とすこぶる曖昧な返事をして、また僕らは肩を並べて歩き出した。

「駿ちゃんはさ、進学なんやろ?」

「いや、就職かも」

「え? なんで? 駿ちゃんの頭やったら、余裕で関関同立いけるやろ?」

「まぁな」

「ほんま、駿ちゃんって、なんでそんな勉強できるん? マジ、羨ましいわ」

「羨ましいって言われても、天才やから、しょうがないよな」

「自分で言うな!」

交通量の多い車道を渡って、二、三度折れたり曲がったりすると、急に目の前が広くなって大きなマンションが所々に建っている。僕らはそのマンションに見下ろされながら歩いた。

ブロンブロンと喧しい4トントラックが僕らの横を通り過ぎたところで僕が「でもな、俺は進学せんと就職やろうなぁ。うち貧乏やから」と言ったら、マコトが「でも奨学金とか借りて、大学っていう選択肢もあるんちゃうの?」と答えた。彼は腕を組み、クリクリした目で無垢な表情をした。

「まぁな。でも早く稼ぎたいからさ。生活費をな。オカン、無理させてるし」

「そうかー。きよぴー頑張って働いてくれてるもんな」

幼稚園からの付き合いである幼馴染のマコトは、昔からオカンの事をよく知っていて、彼はオカンの事をあだ名で、きよぴー、と呼ぶ。

「早いこと、オカンを楽させてやりたい気持ちがあるねん」

「駿ちゃんは、ほんま優しい子やなぁ。大学で遊びたいって考えてる自分が恥ずかしなるやん。あかん。俺も駿ちゃん、見習うわ。今日から心入れ替えて真面目に生きよ!」

マコトは腕を組み、意気込んだ。僕は悪い顔をして「ポジティブマインドやな」と言う。

「出ました! ポジティブマインド! アイツめちゃめちゃ腹立つヤツやったなぁ」

「そうやんな、俺も同感。サブいサブい、って思たもん」と僕らは先輩OBの滑稽を笑った。

「鼻につく、を絵に書いたようなヤツやったな」

「大企業に入れても、あんなおもんない先輩が上司やったら、絶対に一緒に仕事したないわ」

マコトが声色を変えて「ポジティブマインドを持とうよ!」と、さっきの社会人OBのモノマネをした。「似てないねん!」と僕が言うと、「めっちゃ似てるやろ!」とマコトが返した。

「この校舎の向かい側にね、西二号館って校舎が昔あったんですが……って、こんな話したら年バレちゃいますよね」

「もう、ええて!」

「大事なのは、そういった攻めのマインドだよ」

「しつこいねん! やめっ!」とマコトのしつこい物真似にツッコんだ後、僕は「実は、こう見えて僕ね、高校時代はヤンチャしてましてね」と物真似で返した。「お前もすなっ!」とマコトは笑った。

結果、二人で物真似の撃ち合いをしながら爆笑して歩いて帰った。ガストについたら、タケと小林に物真似を披露して、どっちが似ているか決めてもらおう対決をすることにした。負けた方がドリンクバーおごり。

僕らはいつも、こんな感じだった。こんな馬鹿げた事に真剣に取り組み、二度とは戻らないらしい青春を浪費した。後から振り返ってみても非常に勿体無いし、贅沢な時間の使い方をして、少しの後悔があることを僕はここに自白する。

しかしながら青春とは総じてこういう無駄なものが9割、本当に大切なものがたったの1割、そのような割合で構成されているのかもしれないとも思う。だからこそ青春時代を後から回顧した時に、若者のすべてがぎゅっと詰めこまれたたったのその1割が、眩しいくらいにキラキラ輝いて見えるのかもしれない。

※本記事は、2019年11月刊行の書籍『尼崎ストロベリー』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。