デイナイトケアの取り組み②

午前は同じ症状を抱える人たちどうしが、自分たちの病気について学んだり悩みを打ち明け合ったりして過ごしますが、午後はそれぞれが自分のやりたいことを選んでプログラムに取り組みます。内容は、ゲームあり、スポーツあり、芸術や創作活動ありと、多岐におよんでいます。

たとえば、月曜日の午後にクリニックにきていただくと、足下から「ドドドン、カカカッ、ドドドン、カカカッ」という地鳴りのような音が聞こえてきます。これは地下1階で和太鼓の練習をしているからです。参加者は太鼓の前にぐっと腰を落としてきりりと構え、一心不乱にバチを振るっています。

なぜ和太鼓を取り入れているのか? 医学的に「心音に似た規則正しいリズムがストレス緩和効果を、響いてゆらぐ音がリラックス効果をもたらす」「全身運動による身体機能の向上、脳の活性化による治療・予防効果」などの理由を上げることはできます。

しかし、じっさいに彼らの表情を見れば、誰の目にも効果は明らかです。彼らの様子は、とてもこころの病を抱えている人には見えません。参加者どうし教え合ったり、少しでも良い音を出そうと皆で協力したりしている様子を見ると、社会性が回復しているのも手に取るようにわかります。

月曜日と土曜日には、ボクシングをやっているフロアもあります。クリニックの8階には本格的なリングが常設されていて、参加者が真剣にサンドバッグを打ち込んだりスパーリングを行ったりしています。よく見学にきた人には、「患者にボクシングをやらせているのですか!」とびっくりされます。確かに医療施設にリングがあるというのは、聞いたことがありません。しかし、プロライセンスをもった講師を外部から招き、入念な体調管理と安全指導のもとで行っていますから、心配はないのです。

ボクシングは短時間に激しい運動と休憩を繰り返す有酸素運動で、筋力や心肺機能の強化に大いに効果があります。また、目の前の相手と拳をまじえる「非言語のコミュニケーション」ですから、他人と話すのが得意でない人も取り組めます。

※本記事は、2017年10月刊行の書籍『ヒューマンファーストのこころの治療』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。