大黒埠頭から、横浜ベイブリッジを渡れば、新山下の出口は目と鼻の先。ベイサイドクラブの駐車場で車を止めて、プール・バーに入っていく。

ダンスフロアースペースは、もうクローズしていた。カウンターに居た娘に、チーフのミックを呼びだしてって頼むと、彼はすぐにやって来た。

「いやいや、ご苦労様ですー」

白々と夜も明けようとしているこの時間に、こんなにも元気な人間は、『日本中を探しても、そんなに多くは居ないだろうな』翔一は、そう思いながら、分厚い膨らみを持った封筒をミックから受け取り、クサの入った黒い塊を渡した。

「首都高使って来れば、あっと言う間ですよ。横浜なんて近いもんですよ」と言ったとき、時計に視線を移してみるとすでに、午前4時30分を回っていた。ベイサイドクラブからの帰り道、彼は『残っている500グラムも早めに、サバく段取りをねらなきゃな』と考えていた。

部屋のドアを開けると玄関には、香子のパンプスが揃えてあった。『来てるのか』自分の部屋に香子が居るということ、たったそれだけのことなのに嬉しさがこみ上げてくるけれど、彼女はもう寝ている。

服を着替えるとき、新二の部屋で自分の背中に貼ったジッパー袋を、眉間にシワを寄せながら、ペリペリはがして中に入っているモノを、あらためて眺めてみた。そして、彼愛用のパイプにつめて1服してみる。

「うん、前回のモノと同じだな」

それを確認してから、もう1服。そうしてから、よしとけばいいのに彼は、横浜のミックから受け取った封筒の現金を数え始めた。85万円入っているはずなのだが何度、数えても85万円にならない。と、いうよりも数えているそばから、数字を忘れているらしい。

「ずいぶん、飛んでるなぁ、ヤバイからもう寝よっかな」そう言ってベッドで小さな寝息をたてている。香子の隣に、もぐり込んだ。

※本記事は、2017年9月刊行の書籍『DJ』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。