「うん、いいね。なんか、車の工具入れかなんかに見える」
「俺も、そんなイメージで作ってたんだよ。なかなかいいよね」
「上出来でしょう」

新二が言った。500グラムから、削って余ったクサは、ジッパー袋の中に入れて背中の素肌に、ガムテープでとめた。

新二と駐車場に降りて、翔一はフィアットのドアを開けて中を覗きながら少し、思案した。そして運転席の足もと、アクセルとブレーキの奥にガムテープで不自然にならないように固定した。

翔一のフィアットはイタリア車だから、ノーマルセッティングの場合、フットペダルまでが異常に遠い、イタリア人用だから。この車を買うときに、彼の身長に合わせて、ジャパニーズ・サイズ・セッティングに変更してもらった。ペダルを少し?(だいぶ?)、前に出してもらったということで奥にできたそのスペースは、前々から気になっていた。

新二の部屋で作った『黒い箱』のような物体は、そのスペースにスッキリと納まった。中を覗き込んでいた新二が「カーンペキでしょう!」感心したように言った。

「おやすみ」

翔一は、フィアットのドアを閉めながら言った。

「気をつけてね、おやすみ」

新二が言い終えたと同時に、エンジンに火を入れる。

※本記事は、2017年9月刊行の書籍『DJ』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。