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翌朝早く、宗像はホテルをチェック・アウトするとポルト空港へ向かった。車でわずか十分ほどの距離なのだが、タクシーが飛行場に到着したときの様子が少し変だった。

ロビーに入ると右手奥にあるインフォーメーションに大勢人だかりがしている。近寄ると、一人の案内係がさも困り果てたように、ポルトガル語、スペイン語、英語の三カ国語を使って説明を繰り返している。

耳を傾けると今日の午前中は一機の飛行機も飛ばないと言っているようだった。ストライキではなさそうだがと思いながら、続けて聞いていると、今度は機械の故障だ、トラブルだと言っている。

ちょうど隣に居合わせたビジネス・マンらしい男性に様子を尋ねると、どうもレーダーなど、飛行場の管制機器に関するトラブルが原因だから、しばらくは飛ばないようだと説明された。

朝からなんと運の悪いことかと思ったが、故障ではしようがない。特急アルファでリスボンへ戻ることも考えて、インフォーメーション・デスクでチケットの予約状況を確認すると、リスボン到着が十五時か十六時の列車ならば、手配が可能ということが分かった。

しかし飛行機の四十五分は魅力だ。午後には飛べるのではないかと判断し、それまで街でもぶらついて時間をつぶすことにした。搭乗手続きカウンターで尋ねると、電話で確認してから来てもらいたいと念押しされたので、電話番号を控えてホテルへ戻った。

ホテルのロビーには既に何組かの宿泊客が戻っていて、部屋の時間貸しの交渉などをしていた。宗像はトランクの一時預けだけなので、引き換えタグを受け取ることで済んだ。

玄関を出る直前、ロビーに置かれたTVで飛行場のトラブルを中継した番組が見えていたが、その後の新しい展開はなさそうだった。思いがけなくも自由時間が得られたが、良いアイデアが浮かばなかった。