又、母宇宙から宇宙が誕生しているという、我々人間の誕生のイメージに重なるような説もあります。しかし、仮に「インフレーション+ビッグバン」という宇宙誕生説が一点の曇りもなく解明されたとしても、それで一件落着とはなりません。

なぜなら、それは単にこの宇宙の誕生の仕方が解明されたにすぎず、その誕生のルーツであるインフレーションの大河や母宇宙がどのようにして誕生したのかというさらなる問いを残していることになるからです。

何れにしても、マルチバース説が証明されているわけでもなく、我々の宇宙のほかに宇宙が存在するとしても、我々はそれを観測することはできません。

さて、マルチバースであればそれはどの程度に多数なのかということについては、禁止されていないことは繰り返し起こるということと、宇宙の数には上限があるなどということが言えないのであれば、それは、「無数」であることになります。

辞書的には、multi-には「多数」の意はあってもcountless-「無数」の意はなさそうですが、宇宙論や素粒子論でmulti-に「無数・多重」の意を持たせるという認識が一般になっているのであれば、これにより辞書的にもmulti-に新たに「無数・多重」の意を加えたことになりますから、countlessverseに換える必要はなく、multiverseのままでいいことになります。

難解な物理学を離れて、マルチバースは我々が日常目にする風景と重ねてイメージすることができます。それは、例えば、川の堰で生じている無数の水泡です。マルチバースを形成する水泡は無数に生じ、束の間(数十、数百億年のことですが)存在し消滅することを繰り返しています。この泡の一つが我々がユニバースと呼んでいる我々が在籍している宇宙です。

ところで、マルチバースが存在するとしても、それらが我々のユニバースに何らかの形で干渉しているかどうかはわかりません。何れにしても、人類に直接的に影響を及ぼすものは我々のユニバースに限られています。

本章は宇宙から受ける人類に対する災害を云々することを目的としているものですから、この観点にたてば、我々の在籍しているこの宇宙以外の宇宙のことは放念しておいていいことになります。

※本記事は、2020年9月刊行の書籍『神からの自立』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。