最近、気象庁は「これまでに経験したことのないような大雨」というような新しい表現で注意を喚起するようになりました。やや客観性に乏しいですが、注意喚起するには十分なインパクトがある表現です。

気象庁でも予報通りにいかない可能性が高い場合には、悪めの予報を出すのでしょうか。

こんな風に書いていると、天気予報の伝え方と、病気の伝え方がずいぶん異なることに気が付きました。

東京の天気予報は東京に住む人すべてに等しく関係します。老若男女、誰でも同じ天気のもとで過ごすことになります。しかし病気は一人一人すべて違います。

例えば関節リウマチというひとつの病気でも、病気の起こり方、冒される関節、検査成績、重症度などなど、人それぞれです。待合室で他の患者さんとお話しされていて、同じ病気でもこんなに違うんだ、と思っておられる方は多いのではないでしょうか。

これはリウマチにもいくつかのタイプがあることと、人が皆、違う遺伝子を持った個体であることとの両方の要素が相まっているから、複雑な病状を呈するのだと考えられています。

我々医師も病気の重症度や深刻さを伝える場合にはずいぶん注意します。病気は皆同じではないので、できるだけ可能性が高いことを伝えるようにしています。しかし、聞くほうの患者さんも皆さん異なりますので、話は複雑になります。

事実をそのままストレートに話をすることができない場合もあります。そのために不安を感じられたり、不信感を持たれたりする場合もあります。

我々医師は、現在の医学レベルで最善と思われる知識を伝え、治療法を選択しようと思っています。そのためには、医師や医療スタッフと患者さんが良好なコミュニケーションが取れていることが必要になります。

医療スタッフも心を開き、患者さんも心を開いていただいて、病気の診断や治療に最適な場を作ること、それが最善の医療現場であると思っています。

我々医療スタッフも受診される患者さんもすべて地球上の自然の一部であり、予想外のことが起こりうることも想定しながら、来院されるすべての患者さんに満足していただけるような環境が作れるように日々精進したいと思っております。

暑さ厳しき季節です。くれぐれもご自愛のほど。

※本記事は、2019年1月刊行の書籍『リウマチ歳時記』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。