まあ、冗談だがもしも明日われわれが消えていたら、そこからは推理小説が好きな聡父さんの出番かな」

巡査は、その二日前の日誌にも注意を引かれた。

「八月十八日 小雨

お向かいの家は二年前から売りに出しているそうだ。だが、なかなか売れそうもない。

この山荘と同じ二◯◯坪の敷地のはずなのに、二五◯坪といって売りに出している。管理組合に問い合わせたところ、余り付き合いたくない不動産業者が関わっているとのことだった。

午後、表にワゴン車が止まって数人の男たちが何かしているので、何をしているのか聞きに行ったところ、隣の家から測量を頼まれたのだという。お宅も測量をしておかないと、後で売るような場合に不利ですよと熱心に勧められた。よく分からないので適当に受け答えをしておいて、やはり管理組合に問い合わせてみた。

すると、驚いたことに、長野近辺に出没していた測量詐欺集団が、このあたりにも現れているとのことだ。バブルの時代には、別荘地はよく売れた。地価の値上がりを見越し、財テクの一環として、地元の人も別荘地を購入したらしい。勧誘のすごさがしのばれる。

だが、今ではこのあたりの別荘など買う人はいないだろう。少しでも高く売りたいという人間心理につけこんで、詐欺を働くやつがいるのである。

口約束をするだけで、測量と称して現れ、一枚の紙切れ(測量の図面)をよこして、何十万円も請求するのだそうだ。くわばらくわばら」

※本記事は、2020年10月刊行の書籍『百年後の武蔵野』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。