そもそも、さまざまなストレスや依存に耐えきれずにこころの病にまでなってしまった人に「薬で症状は収まるから、後は自宅で規則正しい生活をしながら自力で病気と向き合うように」というのもコクな話です。こころの病から回復するのは、時間がかかります。患者さんにとってほんとうに必要なのは、社会復帰に向けたリハビリの機会であり、規則正しい生活を身につけ少しずつ回復していく“居場所”なのではないでしょうか。

入院でも外来でもない「社会復帰に向けた居場所」の提供こそ、われわれが取り組んでいるデイナイトケアの役割です。患者さんは、健康な人たちが通勤・通学するのと同じように、毎朝決まった時間にクリニックにやってきます。日によっては体がつかれていたり面倒くさいと思ったりするときがあっても、無料送迎がやってきて職員が説得しますから、しぶしぶでも車に乗り込みます。

そうしてクリニックまでくれば、その日その日で「やるべきこと」が用意されています。毎日退屈しないよう工夫されたさまざまなプログラムに取り組み、年間行事やイベントに向けた盛り上がりもあります。それぞれに役割をもって、皆で1つのことに取り組む一体感と達成感。強制的になにかを「やらされる」ということはなく、ぼーっと見ているだけの人もいますが、それはそれでいいのです。そこにやってきて、そこにいることがいちばんの目的なのですから。

こうして規則的な生活でこころと体を安定した状態において、自分のこころの病を理解し共存しながら、社会復帰に向けて少しずつ前進していけるのは、デイナイトケアしかありません。しかし、それに取り組んでいる医療機関は、圧倒的に少ないのが現状です。

これから精神病院を少しずつ減らしていって、デイナイトケアのクリニックに置き換えていくことが必要です。とくに人口が多く精神病院がない東京都内には、地域に根ざした地域精神医療センターが少なくとも100施設は必要ではないでしょうか。
 

※本記事は、2017年10月刊行の書籍『ヒューマンファーストのこころの治療』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。