第2章 社会

どうなる? 地域は

「良くなりました」。病室を訪れた時にIさんは笑顔で迎えてくれました。

93歳のIさんは独居です。心房細動があり、そのために心不全も生じ通院されています。

「右手がしびれて動かなくなった」。そんな電話がIさんからかかってきました。

休日の夜のことです。Iさんは同じ坂下町内に住んでいます。

「すぐ来て下さい」。病院への到着は私の方が早かった。受診されたIさんは訴え通り右手だけ力がありません。

「脳梗塞」。心房細動が原因と思われました。入院治療。発症してから1時間くらいで治療が始まりました。その結果、冒頭の言葉のように症状は改善しました。

意識障害が出現してから30分以内に最寄りの医療機関に搬送された場合とそれ以上の場合とでは予後に大きな差がある。最近そんなデータを目にしました。

どんな病気でも早期発見、早期治療が鉄則ですが、特に脳血管障害や心筋障害などは早い治療が救命に繫がります。それだけに身近な所に医療機関があることが大切です。

化石医師も心筋障害のため、治療できる病院まで1時間くらい要して救急搬送された経験があります。自覚症状はあまりありませんでしたが搬送されながら「こんな風に搬送されるのは大変だ。一分一秒でも早い方がいい」と思ったものでした。

このように早く受診でき、早く治療が行われることが大切ですが、最近そんな大切なことが忘れられてきているように思います。効率が悪い。もっと集約して無駄をなくそう。そんな考えの中で地域から必要な医療が失われつつあります。