◎時計描画検査(クロック・ドローイングテスト、The Clock Drawing Test:CDT)

神経心理学の分野で、時計の文字盤は、視空間認知と構成能力をみる簡易精神機能評価検査として伝統的によく用いられてきました。

時計描画検査は、視空間構成能力だけでなく、抽象概念や数の概念などの言語理解能力、言語的記憶などの認知機能も評価できることから、アルツハイマー型認知症のスクリーニングや重症度評価の補助手段としても有用とされています。

また、老人性うつ病やパーキンソン病患者は時計描写ができることから、アルツハイマー型認知症との識別の一助になります。時計の絵を描かせる手法は、被験者にとっても簡単で抵抗が少なく、認知症の早期発見に有効なテストの1つです。

[図2]時計描画検査
丸い時計を描き、時間の数字(1~12時)、次いで、10時10分を指す短針・長針を描きこむ検査

まずは、時計のない部屋で大きい紙とペンを用意しましょう。紙に円を描き、その中に数字(1~12の時刻)、さらに10時10分を指す針(長短針)を描いてもらいます。15分以内に、時計を見ないで描いてもらいます。腕時計などを見てしまったら、認知症の疑いがあると判断されます。

例えば、円が小さい(直径2.8㎝以下)、円の異常、数字の配列が逆・数字が丸く並ばない・数字が足りない・数字が多い(数字の異常)・針の方向が違う・針が3本以上ある(針の異常)・(デジタル時計のように)時間を数字で描く、といったいずれか1つにでも当てはまるようなら認知症を疑います。

その場合、必ずしも発症しているわけではありませんが、認知症の可能性が高いと考えてよいでしょう。

[図3]時計描画検査と異常判定例
(森惟明[総合監修]:認知症がぐんぐん改善する! 8つの法則(日東書院本社 2015年 P19)より転載)
※本記事は、2018年5月刊行の書籍『改訂版 認知症に負けないために知っておきたい、予防と治療法』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。