だが、別荘に集まる仲間たちは、親の介護やら自分の病気やらで、年とともに数が減っていった。聡も藤田もそれが淋しかった。今年は、ゴルフだけはするという者がいて、ゴルフ場には四名が集まったが、別荘で酒を酌み交わすのはわずか二人である。
「お婿さんはライターだっけ」
「まあそんなものだね」
「どんなものを書いているんだ」
「まあ、旅行記やルポみたいなものだな。売れない仕事さ」
別荘が見えてきた。別荘とはいっても、マッチ箱を倒したような何の変哲もない平屋である。
一寸した崖を裏に控え、庭には芋畑が広がる。丹精された花壇が軒先に現れた。見事な藍色の桔梗に、とんぼが一匹羽を休めている。
「さあ、着いたぞ」
聡は鍵を回した。中から娘や婿が、飛び出してくるだろうと思った。彼等は三日前からこの別荘に泊まっている。
今日は彼らも交えて、ちょっとした宴会をやろう。すき焼きパーティーなんかどうかな。だが、入ってみると中はがらんとして人気がなかった。
「きっと買い物にでも出かけたんだろうよ。このあたりはスーパーに行くのでも、歩いて二十分はかかるからなあ」
拍子抜けしたように藤田が言った。一時間経っても、彼等は帰ってこなかった。二時間待っても帰ってこなかった。
聡はそばを茹でて、藤田と二人すすった。不安になってきたせいか、なんだかつゆの味がまずい。
ふと、夏場は使わない石油ストーブの上の雑記帳に目を引かれた。それは山荘日誌だった。
