大人は昔みんな子供だった

娘の同級生の、チハルちゃんから一通の手紙をもらった。黄色いひまわりの花の便箋とペアの封筒。それは、金色のシールで閉じてあった。

私は丁寧に開けてから二つ折りの便箋を呼吸を止めて開いた。奇麗な文字がしっかりと並んでいた。私は左から右へと文字をゆっくりなぞって行った。

三枚目の最後の行には名前が記されていて、確かにチハルちゃんの今までずっと長い間、胸の奥にしまっておいた思いが表されていた。チハルちゃんが私に一番聞きたいことは、明確に私の胸に突き刺さってきた。

「私のお母さんは どうしていなくなったの? 私のお母さんは 私を愛していないの? 教えて下さい」

私は、全ての私の命をもって考えた。チハルちゃんは私に質問を投げかけているんじゃないのだ。チハルちゃんは自分を産んだお母さんに問いかけているのだと分かった。

私は真剣に答えなければならない。一般的な答えや上辺だけの奇麗事では通用しないと感じた。本音で全身全霊をもって答えなければと責任の重大さに気づいた。

今この時間は彼女のことだけのために使いたかった。私は、彼女に返事を書いた。ウサギの絵柄に私の気持ちを文字にした。

手紙

「前略 チハルさんへ
お手紙ありがとうございました。
いつも明るくて優しいチハルさんが
私は大好きです。

手紙の内容を読ませて頂き、私の今の気持ちの本当の思いを伝えたいと思いました。
私はチハルさんのお母さんに会ったことがないので分かりませんが、私の母親としての子供たちに対する思いを書きます。
私は子供たちを心から愛しています。自分の命よりも大切に思っています。良い時ばかりではありません。言うことを聞かない時は思い切り怒りますし、時には叩きます。
元気の良い時は一緒に遊びます。病気になった時はおとなしくなって私が代わってあげたいと思います。二人とも私にとって宝物です。

チハルさんのお母さんも、本当は離れたくはなかったと思います。何か人には言えないことがあって仕方なく離れたのだと思います。きっと毎日どこかでチハルさんの成長を見守っていると思います。