ゴーストマンションとはどのような状態なのか

ゴーストマンションとは、浮遊限界マンションの初期の状態をいいますが、建物は外見的には健全な佇まいでありますが、よく見れば外装は薄汚れやひび割れが目立ち、鉄部は錆びていて、ただ建っているだけ。

床下あるいは天井裏や地中にある、目に見えない給排水管などの設備や電気設備、建物によっては、エレベーターや消防設備が法令で定められている保守義務もなされていない、不全管理状態のマンションをいいます。

管理組合の活動に於いても、理事長や役員のなり手はおられず、管理費・修繕積立金の滞納や空き住戸も多くなっており、ただなんとなく、なにも問題はないかのように暮らしている。このマンションの将来のことにも、興味も問題もないように暮らしている状態のマンションをいいます。

この状態でも、転売して逃げることはできると思われますが、だんだん区分所有者の「共有財産の維持」意識もなくなり、転売価格も安くなっていき、ますます住民の意識やモラルも低くなっていき、どうすることもできない状況に陥っていきます。

建物の老朽化と共有財産としての維持意識のない、寝泊まりするだけの区分所有者が住む「ゴーストマンション」へと変質していきます。

解体費用も管理組合解散のコンセンサスや将来へのビジョンもなく、建物を壊すこともできないマンションです。

このような状態になると、いつまで管理費を払い続けるのかとか修繕積立金の徴収についても曖昧な状態となってきます。事実、先日報道されていた荒廃マンションの解体問題では、区分所有者は存在していますが、10年前から居住者はいないと報道されていました。

財産価値の客観的価値が低下しますので、転売は無理となり、ますます空き住戸が増加することになります。空き住戸といっても、所有者は存在しますので、管理費の支払い義務はあり、これも滞納に繫がることになります。例え、孤独死された住戸でも、相続権者がおられれば相続人が、また相続放棄されても誰かに相続されることになります。

仮に相続権者がおられず、国庫納付となっても、行政が競売に付し、落札した人が所有者となり、管理費や修繕積立金の納入義務が発生すると思われます。ただ、先程の報道されていた荒廃マンションは、管理費も修繕積立金の徴収もないマンションとのことでした。

つまり、区分所有建物が存在する限り、管理組合は解散できないのです。想像してみてください、あなたのマンションが、街中で薄汚く生気もなく佇んでいる姿を。もはやこの状態は、当該マンションだけの問題だけでは済まされないのです。空き住戸への不法侵入者、街の景観障害などで近隣や行政にも迷惑をかけている状況になるのです。

解体してこれらの迷惑を解消できれば良いのですが、自ら解体する力もなく、かといって、適正な建物管理や管理組合運営もできない状況に陥っているのです。このような状況に至っても、行政は相談には乗ってくれますが、金銭的な手助けや支援はしてくれません。

あくまで戸数の数だけ区分所有者がおられ、その方々が、それぞれ専有部分の所有権を持ち、共用部分は区分所有者全員の共有所有権となっている、民間の財産物であり、行政機関は不介入の原則があり、介入できません。

テレビ報道などで、朽ち果てた家屋を行政が解体する場面がありますが、この事案では、このままの状態では、倒壊して通行人など第三者に危害が及ぶ恐れや、鉄骨造の場合は、耐火被覆材のアスベストが飛散して懸念される健康被害の防止のために、所有者が解体しないので、行政が代執行しているにすぎないのです。

解体費は、その建物の所有者に請求されます。むしろ行政による解体代執行より区分所有者による解体の方が、安価に解体できると思っています。逃げ得はできません。

国民の税金を個人財産の解体費に使うことはできません。全く該当する所有者が見つからない時は、まず所有者がいないと裁判所が認め、行政に所有権を移し、払下げなどで新たな民間人に所有権を移すか、公園や広場にして公共の為の施設として利用できるような法整備も必要になると考えています。

なにせ、現状もそうですが、空き店舗やシャッター街でもわかるように人口減少が影響しはじめ、近い将来は、転売もできない分譲マンションや戸建住宅が散見されるようになります。

今から45年後の2065年の国民の人口は約8800万人[図表]になると予想されています。簡単にいうと、全てのモノが現在の2/3になるということですので、1/3は不要となり、なくなる勘定になります。

写真を拡大 [図表]日本の将来推移人口
※本記事は、2020年2月刊行の書籍『分譲マンション危機』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。