「確か同じクラスだよね? え~と、ひまりちゃん、ひまりちゃんだよね?」
「はい、ひまりです」
「ひとりで来たの?」
「はい」

触れると消えてしまう、しゃぼん玉のような返事だった。ひまりはアッキーと同じクラスメートだった。

ひまりは、自分がひとりでコンサートに来ている事がなんだかとても恥ずかしくなってきた。アッキーパパはひまりがアッキーと同じクラスメートで、しかもひとりで来ていることを知ると、「せっかくだから一緒にお茶でも飲んでいこう」と優しく誘った。

アッキーパパはアッキーにどこかお店を探してこいと言いながら、アッキーママの目を見て了解を得た。アッキーママも笑顔を返して、とても嬉しそうである。アッキーはものの五分もしないうちに戻ってきた。

「探して来たよ。あの角を左に曲がってすぐのところが、一階がイタリアンで、二階がカフェになってたよ」
「おい、席は空いてたか?」
「奥の席のお客さんが帰るところだったから予約して来たよ」
「ずいぶんと気が利くなぁ」

なんだか少し舞い上がっているアッキーだ。そんな彼を見てアッキーパパもアッキーママも嬉しそうだった。アッキーとひまりは無言だが横に並んで前を歩き、その後ろをアッキーパパとアッキーママが歩き、カフェまでの道のりを急いだ。