プランクは、部屋の隅、壁の電灯の下にある金属製の収納庫にやってきて、そっとしゃがみ、暗褐色の液体が目いっぱい入った重いクリスタルガラスのボトルを取り出した。彼は自分のために濃厚な甘味のリキュールをグラスに注いだ。それを飲むのは極めて稀なことではあった。

でも特別な状況下だ。グラスごと飲み干し、眼を閉じ深く息をついて、それからまた注いだ。

ある時、新聞記者に「神を信じるのか?」と尋ねられ、プランクはこう答えた。

原子振動を引き起こす力、そしてミクロの原子太陽系を凝集する力があるおかげで、物質全体は生成し存在します。そして、その力の背後には、ある意識的で知的な心があると仮定しなければなりません。

プランクにとって、心はすべての母体であった。

その発言について、世界の最も偉大な科学者の一人であるプランクは本当に神を信じている、という風に解釈した人もいれば、一方では神を冒涜する硬直した無神論者である、と言う人もいた。

今……今晩のことで……これらの全ての疑問とジレンマは意味を失った。マックス・プランクは、グラスを収納庫の上に置き、再びテーブルの上の物体を見つめた。

その周りに、ブリュッセルで開催されたソルベー・コンファレンスでの、アインシュタインとのあの運命的な邂逅以来、長年かけて設計に取り組んできた装置試作品があった。心底保守的であり、新機軸や思惑には気乗りしないプランクではあったが、アインシュタインの論理や議論を封じ込めることはできなかった。

それは理論物理学の分野から実用的応用分野へ移行した転換点であった。ベルリン大学の教授職に就いていたおかげで、その後に、グリューネヴァルトのプランク一家の邸宅の離れに、かの快適で小さな実験室を開設することができた。

※本記事は、2020年10月刊行の書籍『私たちはみんなテスラの子供 前編』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。