片山はその合図を見て、テーブルの下で手をひろげた。翔一は、既に用意していたマッチ箱を、彼の手のひらに置いた。

「ちょっと、トイレ」

そう言って彼は、席を立った。おそらく、中身を確認しに行ったのだろう。しばらくして、ニコニコしながら彼が戻ってきた。

「この間言ってたモノって、これなんだ?」
「そう、そのサイズ。どう? 他の物と比べてみて」
「うん、これは別の所で買うのと比べても多いと思うけど、これで一本(一本と言うのは、1万円のことだ)なの?」
「そう、それで一本だよ」

同じ言葉で答えると、片山は、財布から金を出そうとした。

「片ちゃん、これはいいよ。ノープライスサンプルってことでさ」

彼の動きを押し留めた。

「それは、悪いよ」

と、さらに差し出そうとする手を押し止めて

「それよりも、火曜日の夜に『サックン(クサの隠語)』が来るからさ、そっちのほうのオーダー取ってよ。それでいいから」

翔一が言う。

「えっ、それでいいの? OK、そっちは任せてよ。じゃぁ遠慮なくいただくね」
「それから今のも、オーダー受けるからね」
「OK、わかりました」
「火曜日の件は、この前のときと同じものでプライスは100以上で2500、10単位は、3000ってことでお願いします」
「わっかりましたー」

無意味に元気な片山の声に、またふき出しそうになりながら翔一はマライヤを出た。