「はいはい」

晴はふっと息をつくとコロッと変わって、

「ああ、お腹がすいたー。あっ、きんつば、ちょうだいね」

いつものことだが、少女たちは笑い転げた。晴はきんつばを頰張りながら

「ところで、私たち雑誌を出すことにしたのよ」と、真顔になって言う。

「雑誌?」

晴からこんな言葉が出るなんて思わなかった。美津は晴の顔を見た。相変わらずいたずらっ子の、何かを企む顔だ。

「自分たちが考えていることや、思っていることを、文章や歌や詩にするの」
「何か難しそうね」
「紅林先生も、寺田先生も参加してくれるのよ。力強いわよ。あなたも、むかしから綴り方は得意だって言ってたじゃない。短歌も国語の先生にほめられたし」

晴が美津を覗き込む。

「うん……今までに書いた詩もあるけど……」
「すごいじゃない……」
「ほんの雑誌の真似をしただけよ」
「ねー見せて、見せて」

晴がはしゃぐ。

「やっぱり、恥ずかしい」

※本記事は、2018年3月刊行の書籍『ブルーストッキング・ガールズ』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。