2013年5月1日 医師の研修制度

青空に青葉が映える清々しい季節になりました。

大学にほど近い大江戸線の若松河田駅から地上に出ると見事にサツキが咲き誇っています。サツキは鮮烈なピンク色ですが、背景に若葉の緑があると妙に落ち着きます。自然のもたらした素晴らしいコントラストです。

4月に初めて医師としてデビューした人々も、1か月たつと医師らしい顔になってくるから面白いものです。今回は、現在の日本の医師研修制度を少し説明いたしましょう。

医学部での6年間の盛り沢山な医学教育を修了し、無事に卒業ができて、厳しい医師国家試験に合格した人には医師免許が与えられます。しかし一人前の医師になるためにはそれからの長い修業が必要です。

最初の2年間は初期臨床研修医として主に病棟で勤務します。最初から大学病院で研修する医師もいれば、市中病院などで研修する医師もいますが、どのような状況でも先輩医師の指導の下、病棟の主治医としていろいろなことを学びます。

その後、通常3年間の後期研修医を経験します。当センターに所属する研修医は、ずっと東京女子医大にいるのではなく、外部の市中病院でも研修し、見識を広めてきていただきます。

東京女子医科大学では伝統的に医療練士という制度があり、後期研修を終えたのち、さらに3年間研修して、一人前の医師として認められるところまで教育します。

当センターの外来ではいろいろな医師が外来を担当していますが、外来担当医で最も若い医師は卒後6年目です。若い医師は見方も新鮮で、活気があって頼もしいです。ちなみに私は58歳ですが、当センターの医師では最高齢です。

「経験のある医師が良い」という人がおられます。確かに一理はありますが、「お年寄りのお医者さんに診てもらいなさいと言われて先生を受診しました」と言って患者さんが私の診察室に来られた時は、私もさすがにちょっとへこみました。

医学・医療において経験はとても大事です。しかし、現在の医学は日進月歩で、臨床の知識も治療法や治療薬もどんどん進歩しています。この流れの中で、医療は医師の経験に頼る医療からエビデンスのある(科学的に正しい)医療に大きく変わっています。

したがって、現在では経験のある医師ほど良いということはなく、よく勉強している医師ほど優れていると言うことができるかも知れません。たぶん、知識の量から考えれば、「お年寄りの医師が医師として優れている」という時代はとっくに終わったと思います。

特に当センターの若い医師はとてもよく勉強していて、知識も豊富です。さらに予約の患者さんのカルテを外来前日に予習して、当日の診療のための準備までしています。これからは、若い医師ほど頼りがいのある医師かも知れませんね。

ただし、我々のようなベテラン医師はそれだけ長く人生を経験していることから得たものもあると思います。鮮烈な色彩のサツキのような若い医師と、青葉のように背景で色を整えるベテラン医師と。

うまく調和がとれるように、所長として配慮していきたいと思います。

5月は穏やかな気候になることが多いですが、今年は年初から天候不順が続いています。くれぐれもご自愛いただけますよう、お願いいたします。

※本記事は、2019年1月刊行の書籍『リウマチ歳時記』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。