そして昭和55(1980)年代頃から、自閉症は心因性の問題ではなく、脳の中枢神経の障害と考えられるようになったことから不適応行動の改善、修正には行動療法による指導が有効であると支持されるようになりました。現在では、エビデンス(科学的根拠)が多く得られている応用行動分析(ABA)の考え方が教育法に取り入れられています。

しかし、教育上は心理的コミュニケーションの構築という面で、全くコミュニケーション能力が欠如しているわけではないので、子どもの気持ちを大人が「受容」するというかかわりは基本的に重要な事柄であると思います。脆弱(ぜいじゃく)なコミュニケーション力からくる自傷行為やストレス性障害などの精神的な二次的障害を防ぐという意味でも、心理的な視点にたって子どもと共感し、承認する「受容」を中心とするかかわり方を大切にすることは重要です。受容という信頼関係のもとに人のコミュニケーション能力が育っていきますので、対人関係において感情や情緒的なかかわりは重要です。

ただ、当時の行動心理学者にとっては、「受容」という心理的概念は、あまりにも数値でとらえられない曖昧模糊とした概念だったのかも知れません。最近の研究では、受容という教師の指導態度、指導行動が数値をもってとらえられるようになってきているため、発達障害のある子どもの問題行動と教師や親の「受容」の差を比較検討することができるようになってきたと思います。

つまり、ASDへの指導については、コミュニケーションや人間関係、認知行動療法、感情心理学からも多面的に研究の知見を取り入れていく姿勢が求められます。

※本記事は、2019年6月刊行の書籍『もしかして発達障害? 「気になる子ども」との向き合い方』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。