文部科学省は、中央教育審議会の2018年答申の中で、知識、技能、思考力、判断力、表現力等、学びに向かう力、人間性等の資質、能力の調和がとれた個人の育成、学習を通じて身に付けた知識・技能や経験を地域や社会での活動に活かしている者の割合の向上等を掲げています。

これらを学ぶ手段としてアクティブラーニングを推奨し、小中学校の学習指導要領改訂案では、「主体的・対話的で深い学び」と記載し、やはり受動的な授業よりも能動的な教育の重要性を指摘しています。

また、同じ年に幼稚園教育要領、保育所保育指針、幼保連携型認定こども園教育・保育要領が改訂され、「知識及び技能の基礎」、「思考力、判断力、表現力等の基礎」、「学びに向かう力、人間性等」を教育方針の3つの柱としています。

これらの目的、内容には共通点がとても多く、日本の教育方針の一貫性を感じることができます。このことは、「社会人基礎力」の育成を幼児から進めていくべきと読み取ることもできます。つまり、社会人になってから、あるいは大学に入ってから「社会人基礎力」を育成するのでは遅く、幼少期から継続して育成していくべき重要な力であるといえるのです。

保育園、幼稚園、小学校などは、この要項に従ってカリキュラムを策定しているわけですが、子どもが小さい頃は家で過ごす時間が長く、家庭での生活、教育が子どもの能力の向上に非常に強く影響しています。しかし、家庭では教育カリキュラムを策定することが難しく、共働きの家庭も多い中、どのように子どもと接すればいいのか悩んでいる親御さんが多いのが現状ではないでしょうか?

そこで本書では、具体例を多く示し、日常の生活の中で「社会人基礎力」を高める方法をわかりやすく記載しています。子どもの性格は十人十色であり、本書をお読みいただいている親御さんの教育方針もいろいろだと思います。本書での対応がすべてではなく、1つでも2つでも共感していただける部分があれば何よりです。

子どもが頑張るモチベーション

スキャモンの発達・発育曲線によると、子どもの脳は6歳で大人の脳の9割まで完成すると言われています。幼少期に急激な成長をみせる子どもの脳は、スポンジのように多くの物事を吸収します。好奇心も旺盛で、見るものすべてに興味を示し、すぐに触ってみたくなります。

特に、他人よりうまくできたもの、褒められたものは、成功体験として大きな自信を手にします。自信があるものは、誰かから言われなくても積極的に挑戦し、どんどん上達します。逆に、うまくいかないもの、他の人に比べて劣っているもの、できなくて怒られたものなどは、自信を失い努力する力をなくしてしまいます。

そして、小学校に入ると成績表により、“得意”が客観視されます。この6歳の時点で、自分の順位を認識するのです。成績が良い子は、次の成績で自分より成績の悪い子に抜かれると、とても悔しい気持ちになります。良い成績をとるために努力することが日常となり、自分でも気が付かないうちに勉強する習慣が付いていきます。

逆に成績が悪い子は、そんなものだろうと感じ、次の成績が悪くても、それを受け入れてしまうのです。もちろん、その後の努力で逆転は可能ですが、強いモチベーションや目標がないとなかなか順位を変えるパワーに結びつかないようです。つまり、脳の9割が完成する6歳の時点での順位が、将来のおおよその自分の順位を決めてしまうのです。

人が努力するモチベーションは、大きく分けて3種類と言われています。1つは褒められること、2つ目は達成感を得ること、3つ目は高い目標があることです。しかし、小さい子どもは、達成感を感じにくく、明確な目標も立てられません。結局、子どもが頑張るモチベーションは、褒められることに尽きるといえます。

一見、役に立たなさそうな事柄でも、頑張っていることがあれば褒めてあげてください。将来の偉大な力の源になるかもしれません。

本書では、小さい頃から「社会人基礎力」を養う方法について、具体的にわかりやすく記載しました。もちろん、すべてを実行する必要はありません。いいと思ったフレーズだけでも試していただければ幸いです。

※本記事は、2020年10月刊行の書籍『デキる社会人になる子育て術 元ソニー開発マネージャが教える社会へ踏み出す力の伸ばし方』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。