第1章 認知症とはどのような病気か?

◎人格の変化が特徴的な「前頭側頭型認知症」

三大認知症と前頭側頭型認知症(ピック病を含むfrontotemporal dementia:FTD)を併せて「四大認知症」と呼ぶことがあります。

頻度はアルツハイマー型認知症の1/10以下(数%)です。65歳以下(40~60代)の発症が多く、性差はありません。ときに家族歴を有することがあります。

アルツハイマー型認知症では、大脳皮質全体に障害が起こるのと比べ、ピック病(Pickʼs disease)では文字通り脳の前頭葉と側頭葉に障害(萎縮)が起こります。

なお、ピック病(最初に症例報告したアーノルド・ピック医師に由来)は前頭側頭型認知症の代表疾患ですが、ピック病は病理学的にピック球(ピック小体)を認めるものと定義されました。

異常にリン酸化したタウ蛋白が蓄積します(タウオパチー:tauopathy)。ピック病の症状は前頭側頭型認知症のそれと同様であることから前頭側頭型認知症の原型と考えられます。

[図1]前頭側頭型認知症のMRI像
60代後半女性。2年前から記憶があいまいに。家事に無関心・無気力、肉じゃがを作れない。日にちが分からない。めまいがする。朝から起きていられない、ふらふらする。本やテレビを見ていると気分が悪くなってくる。HDS-R13点、MMSE13点。両側前頭葉および両側側頭葉の萎縮が目立つ。海馬の萎縮は認めない

[図2]前頭側頭型認知症の脳画像
左:MRI像、右:脳血流SPECT像。60代女性。お金の計算もできて、買い物に行っても同じ物を買ってくることはない。夫の顔も覚えている。しかし「言葉が分からなくなった」と困っていた。頭部MRIでは両側(特に右側)の側頭葉に萎縮がみ られる。脳血流SPECT(3D-SSP)では明らかにその場所の血流が低下していた。アルツハイマー型認知症で特徴的とされる後部帯状回、楔前部の血流低下は認めない。この方は左利きなので、右側に言語機能があるようである