50代以下の人はインドと聞いて何を思い浮かべるのだろう。多くの人は世界遺産に登録されているタージ・マハールを思い浮かべるかもしれない。

映画好きの人はインドの映画『ムトゥ踊るマハラジャ』のイメージだろうか。IT関係の人はインドのソフト技術者が優秀で、アメリカのシリコンバレーで働く人は5割以上がインド人だと指摘する人もいるだろう。

どれもインドの一部であり間違いではないが、一面にすぎない。インドを理解することは専門の学者でも困難といわれているが、面白いのはインドに惚れ込み何度も行きたいと思う人と、インドを大嫌いになり2度と行きたくないと思う人にはっきり分かれることだ。

他の国については、ここまではっきりとは意見が分かれないが、どうしてインドだけ両極端になるのだろうか。いろいろ聞いてみると、嫌いになる人はインドの不衛生、公衆道徳の欠如やインド人によく見かける自己中心的な性格などが主な理由のようだ。

不思議なことに惚れ込む人は正反対で、嫌いになる人が挙げた要因がそのまま好きになる要因になっている。好きになる人は、インドでは本当の人間らしい生活ができる、肩肘を張り体裁を繕う必要がない本音の世界だ、と言う人が多い。

嫌いな人が集まると、インド人の悪口が多くなる。誰かが悪口を言い出すと、他の人がこんなこともあると言い出し話題が尽きない。日本人だけでなく他の外国人と話しても同様なので、決して日本人の偏見ではないようだ。

もちろんインドにはインドの良いところもあり、筆者自身何人もの友人を持っているが、インドが理解されない点、嫌われる点を主に、一民間駐在員の目から見たインドを紹介しよう。

この文は、大半が2001年に書いたものだが、2019年にインドに行かれた方に聞いたところ、大きな変化はないとのことだ。インドは悠久の国と言われるように、時間がゆっくり流れているようだ。

なお、当時は1ルピーが3円ほどだったが、2020年には1.5円と半分になっている。インドのインフレから2019年の物価は2001年の倍くらいになっているので、為替レートから、換算した円価は変わらない。文中にある、ルピー価は2019年には倍近いだろうが、円換算はそのままとして読んで欲しい。