・法医学的異状の意味

法医学的異状については、既に、昭和44年3月27日東京地裁八王子支部判決(昭和42年(わ)第4号)により、その意味が示されている。

同判決は、その判旨のなかで、「変死者又は変死の疑いのある死体があるときは警察署長はすみやかに警察本部長にその旨報告すると共に、…検察官が検視するのであるから、……医師法にいう死体の異状とは単に死因についての病理学的な異状をいうのではなく死体に関する法医学的な異状と解すべきであり」と述べ、あくまでも「死体に関する法医学的な異状」と述べている。

さらに、この「法医学的な異状」について、「死体自体から認識できる何らかの異状な症状乃至痕跡が存する場合だけでなく、死体が発見されるに至ったいきさつ、死体発見場所、状況、身許、性別等諸般の事情を考慮して死体に関し異状を認めた場合」と説明しており、不審死体の取り扱いに関する常識的な見解を述べているに過ぎない。

法医学的異状の意味するものは、検視を行うべき変死者または変死体の判断根拠として、死体発見のいきさつ、死体発見場所等のことと解釈するべきであろう。

※本記事は、2018年12月刊行の書籍『未来の医師を救う医療事故調査制度とは何か』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。