ブルーストッキング・ガールズ

2

「なあに、木島ごときの小説や演説で、どうともなりませんよ」

そのときドアの向こうでゴトゴトと音がした。三人に緊張が走った。

「静かに」

寺田が外を覗う。

「失礼します」とドアをいきなり開けて、四人の少女たちが転がり込んできた。寺田はその勢いでドアに思い切り頭を打ち付けられた。

「お前ら、何だ」
「こんつはー」

晴が敬礼で挨拶をした。

「こんつわーだと」
「かわいいスパイですな……この連中は何ですか」
「うちの学校の生徒ですわ」
「ああ、本当に申し訳ない」

寺田が頭をかいた。

「初めまして、武田喜久と申します」
「淺野美津と言います」
「石田多佳と申します」
「鈴木晴。四人とも、先生の女学校の生徒で、寺田先生と紅林先生のかわいい教え子でーす」
「淺野さん、こんな所に出てきて大丈夫なの」
「そうだ、淺野、お前、病気で休んでるはずじゃなかったのか。けしからん」
「いえ、私が無理に誘ったんです。どうしてもって……こんなことって千載一遇だって……」

喜久が言い訳をした。

「おい、木島先生は演説前で忙しいんだ。とっとと帰りなさい」

寺田が怒鳴った。

「まあ、いいじゃないか。私の小説を読んでくれているのかな」
「はい、『煩悶』をとても興味深く拝読いたしました」

美津と喜久が元気に答えた。

「そうかい。あの主人公が恋する女性はね、“新しい女”なんだよ。一人で生きている女さ。文学に燃えてはいるが、自分の生まれた家、しがらみ、世間の目、いろいろなものから解き放たれたいと願っているのさ」

美津は目を輝かしている。

「そこで朔太郎と出逢うんですね」